「武雄温泉のまねき鮨」

「手前勝手世界食物語、第673話」
「武雄温泉のまねき鮨」
博多から特急で約1時間。佐賀県の武雄温泉駅は長崎新幹線の乗換駅である。武雄温泉駅と長崎駅間は長崎新幹線が走り、博多からはリレー特急が走っている。ここで新幹線と特急を相互に乗り換える訳だ。
そんな武雄温泉で20年来通っているのが「まねき鮨」だ。
元々名古屋駅前で店を開いていたが、21年前に地元に戻ってきて営業している。御年80歳の大将が本来ならば息子さんと一緒に握っているのだが、息子さんは病気療養中で大将一人での営業だ。基本は予約のみでの営業だ。
兎に角手数を掛けてネタを作り美味しさ美味しさを追求している。これぞ鮨というものだ。一手間二手間が肝心なのだ。
夕方の列車で訪れると、いつも通り大将が待ってくれていた。大将は6年前に前立腺癌を患ったが今も元気だ。同病相哀れみ、私は山葵抜き、生姜抜きでお願いした。刺激物は全く受け付けないので。
まずは「鰯の梅煮」鰯は有明海産。梅は店前の公園に菜っていたもの。(写真:S8)
「鯛の昆布締め」は岩塩で食べる。(写真:S9)
「やり烏賊」有明海で今が絶品だ。(写真:S10)
「大トロ」(写真:S11)
「カツオ」(写真:S12)
有明海の魚介類は全て基本的には豊洲へ行くという。また海苔が不作だと聞いたが、と問うと中級品以下は値上がりしているが、高級品一枚500円の海苔は値上がりしていないと。
「鮑と蒸し雲丹の海水漬け」(写真:S13)
手間を掛けて雲丹を蒸しているので海水の中でも濁らない綺麗なままだ。鮑もこりこりしていて美味しい。まあ、何を食べても美味しいのだが。
「甘鯛の揚げ物」(写真:S14)
「鮑の肝の煮付け」酒と醤油で煮込んでいる。(写真:S15)
次からは握りで。「ネタは左から小肌、烏賊、中トロ、鱚、鯛」(写真:S16)
「鮪の漬け」(写真:S17)
「雲丹」(写真:S18)
「玉子焼き」(写真:S19)
「お吸い物」(写真:S20)
「焼き穴子」(写真:S21)
この穴子、実は伊勢湾岸沿いの三重県産でこれが一番旨いそうで、穴子は三重産に限るとまで言っていた。ご存じの通り武雄温泉は江戸時代より長崎街道沿いにあり全国から長崎に訪れた人たちが必ず通過した歴史ある街だ。北は玄界灘、南は有明海、西は五島列島に囲まれた立地だから海の幸には恵まれているのだ。
いやあ、何を食べても美味しくて満腹で満足して大将ご夫婦に送られてタクシーで駅へと向かいました。今度は果たしていつ来られるかなと不安だが、数か月後にはまた来よう。今回はANAのマイレージで只の航空券だったが、お金を払っても食べる価値ある地方の名産鮨店でした。