「10月歌舞伎観劇レポート」

「10月大歌舞伎観劇レポート」
歌舞伎座は相変わらずのソーシャル・ディスタンスを取った座席となっていた。
第二部の「天満宮・菜種御供 時平の七笑」
「身替座禅」の作者でもある初代並木五瓶の作で、東京で公演されることは本当に珍しいという。
天満宮は京都の北野天満宮のことで、菜種御供とは梅の枝のこと。宇多上皇の引きにより右大臣(左大臣に次ぐ宮中第2位の地位)となった菅原道真(57歳)は、実の娘と醍醐天皇の弟と恋仲になり、その付文が見つかったとされ、天皇家を乗っ取り醍醐天皇に替えて弟を天皇に着け外戚として政治を支配しようと考えていると疑われ、宮中に呼び出され、そこで唐の国から来ていた密使が証拠の文を出したため、左大臣の藤原時平(本来はときひらと読む。年齢37歳)は道真を庇うのだが、結局醍醐天皇の命により大宰府に流されることになる。これが901年1月25日のことだった。しかし、実は道真追い落としの主犯は時平だったのだ。時平は策が上手く運び高笑いをするがこれが七笑なのだ。正にテレビドラマ「半沢直樹」での歌舞伎役者の高笑いはこの物語から来ているらしい。舞台では演じられていないが、2年後903年2月25日に道真は大宰府で死んだが、それから次々と京の都では色々な怪奇現象が起こり、道真の祟りと恐れられるが、その後名誉を回復することになる。


「太刀盗人」 岡村柿紅 作
舞台背景は能舞台を真似て、後ろには松が、左右に竹が描かれている。
初演は大正6年。寺町の市に、田舎者の「万兵衛」は帰郷する前に土産を買おうとして訪れた。物凄い数の人で混雑していた。そこに現れたのが「すっぱの九郎兵衛」だった。彼はすりなのだ。そして万兵衛が持っていた黄金の太刀を奪おうとしたが、二人は太刀を握り合い互いのものだと言い張る。太刀とは刃を下した直刀で腰に吊るすが、刀は反りがあり刃を上にして腰に差す。古いのが太刀で実践的なのが刀だ。
さて役人が来てどちらのものか判断することになる。まず最初に万兵衛に「何者か?」と問うと大声で答える。同じ質問を九郎兵衛にもするが同じ答えをする。次に「太刀の由緒、謂れ」を聞くが、これも最初に万兵衛が答え、それを聞いていた九郎兵衛は同じ答えをする。こうした堂々巡りが続くが、最後は小声で耳元で答えたので、悪いのは九郎兵衛だということがばれる。しかし九郎兵衛は隙を観て太刀を持ち逃げするというお話しでした。

二つとも初めて観る演目だったので面白かった。