「正倉院の世界」

『J REPORT 2019年10月第4週号』
「リタイアメント・ノート 11年4か月目」
「VOL.1130号 SINCE  AUG.12th, 1983」
「正倉院の世界」
「御即位記念特別展 皇室がまもり伝えた美」と銘打った展覧会が上野の東京国立博物館で開催されている。これは絶対に見なければ損だ。私は先日奈良国立博物館の先生の講義を受けたので、内容的にはかなり知っているつもりでいたが、やはり実物には驚かされた。(写真:N2)N2
そして非常に混んでいた。
入口付近には聖武天皇(701-749)の死後49日目に光明皇后が東大寺に寄贈したリストの現物が展示されていた。勿論国宝だ。これだけでもう涙が出てくる。こんな古いものがきっちと残されているとは、本当に素晴らしい。
写真撮影は勿論出来ないので、我慢するしかないが、最後に正倉院の模型があった。(写真:N3)N3
校倉造りだ。(写真:N4)N4
以前にも述べたが、校倉造りは湿度の差で木が伸縮し、内部の環境が一定になると学校で習ったことは全く嘘だったということだ。宝物の保存には色々な箱がその役割を果たしていた。何重にも木箱に入れられた宝物がこの日本の気候に一番あっていたということだ。
正倉院は天皇の許可がないと絶対に開かない。これが扉の模型だ。(写真:N5)N5
鍵には封印がなされている。(写真:N6)N6
五本の弦がある琵琶は世界中にこの品しかない。勿論これは模型だ。「螺鈿紫檀五弦琵琶」(写真:N7)N7
「螺鈿紫檀阮咸」(写真:N8)N8
それではパンフレットを見てみよう。(写真:N9)N9
(写真:N10)N10
「紫檀木画槽琵琶」草原の狩猟が描かれている。(写真:N11)N11
「伎楽面 酔王」舞台演じるための仮面だ。(写真:N12)N12
「海磯鏡」(写真:N13)N13
そして、「黄熟香」(蘭じゃ待)(写真:N14)N14
「じゃ」の漢字が見つからないので省いたが、この「蘭じゃ待」には東大寺の文字が隠されている。
これは香木だ。東南アジア産の木だが、樹液が染み出し、それが木に浸透し、水よりも重くなったものだ。白い印があるように天下人になった人も、これを削っている。一番右が足利将軍、その隣が織田信長、一番左は明治天皇が削った部分だ。足利将軍は香道を作り上げ、信長は茶道を広めた。生涯に一度しか見ることができないものではないだろうか。
シルクロードの最終地点である奈良でヨーロッパや中東、そして中国の宝が存在すること事態が摩訶不思議な世界だ。
奈良まで行ければベストなのだろうが、東京でこれだけのものが観られるのは、恐らく今回のみだろう。後期展示は11月6日からでまた新しい展示物が出てくるという。もう一度行こう。