本の話し、知の巨人 荻生徂徠伝」

「本のお話し、知の巨人、荻生徂徠伝」(写真)

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「知の巨人、荻生徂徠伝」(角川文庫)の話しをしたい。荻生徂徠と言う人は五代将軍綱吉の時代に見出され、八代将軍吉宗の時に活躍した人だ。漢籍に絶対的に強かった人だ。当代随一だったという。彼の文章の現代約の一部をご紹介しよう。「大昔、わが東方の国(日本)は文字を知りませんでした。やがて王仁(わに)氏が字をもたらし、吉備真備(きびのまきび)が訓読方を考案し、菅原道真が文通を隆盛にし、藤原せいかが経学を中興させました」とあるので、恐らく日本語に漢字が定着したのはこのような経緯なのだろう。徂徠は更に言う。「経書などの漢文には返り点および捨て仮名が振ってあり、それをよりどころに飛ばしたり元へ戻ったりして読む。町の学宿ではどこもそんな読み方で教える。わたしの教え方は違う。従頭直下と私は言っている。頭からまっすぐ下に読む。」これは非常に難しい読み方だ。返り点や捨て仮名があっても満足に読めないのに、従頭直下とは生徒にとっては大変なことだったろう。徂徠はこの従頭直下で漢文を読むのだが、その発音は所謂日本語の「音読み」だった。そこで長崎の通史(通訳)に中国語の発音を習い、漢文を中国語の発音で読めるようになったという。そんな天才的な徂徠を重んじた吉宗は直接彼の意見も聞き政道に活かしたという。儒学に新しい風を吹き込んだ人として知られている。