「手前勝手世界食物語、第268話」

もう時間も大分経つのでこの欄の題名である「手前勝手世界食物語」と名付けた所以などを語ってみよう。元々このホームページを開設したのは2001年の11月だった。過去のホームページを観ていただければ分かるのだが、まあその頃からよく海外旅行に行っていた。そしてその際に食べたものを記録しようと思い立ってこの欄を作ってみた。勿論海外だけでなく、国内でも美味しい店を探して歩いた。そんな記事を読んだ一部の方から「自分も行って見たい」とのお話しを頂くようになり、それならばと、これまで実に268回も更新を重ねてきたということだ。だからその名の通り、「手前勝手」というのは「私の自らの感覚」で判断し、「美味しさ」の基準も私独自の判断である。ある時、ある店に行ったら、私のホームページを観て、訪れた客がいたとか、アルバイト募集したら私のホームページを印刷して持ってきた人がいたとか、聞く事もあった。まあ、どこかで私の味を共有する人たちもおられるらしいので、これからも続けていくつもりだ。国内では勿論だが、海外でも仮に個人旅行でなく団体旅行であっても出来る限り、グルメな店を探して行くようにしている。団体旅行の場合は所謂「ツアー飯」であり、美味くない。従って、ツアー飯を断って個人で街に出掛けて食べることも度々ある。そういった自由を認めてくれないケースもあるが、無理をしてでも旅先でも美味しいものを食べたいと思っているのだ。

「築地場外市場、鰹節の秋山」
久し振りに築地の場外市場を歩いてみた。流石平日だが観光客の姿が多い。例の有名な卵焼き屋さんの「丸武」には弟のタレントさんの写真が飾られていた。さて今日ご紹介するのは恐らく築地で「鰹節」では唯一の店だろうと思うのだが、その名は「秋山」。削りたての鰹節を販売しているのだ。鰹節自体を販売するのはあるだろうが、「削りたて」というのが味噌なのだ。料理屋さんでも自らの店で鰹節を削るところもあるのだろうが、ここ築地で削りたてを買い求めてきて、すぐそのまま湯に入れるところも沢山あるのだろう。店先には数多くの客が来ていた。「出汁」には「鰹節」「煮干」「昆布」と色々あるが、料理の基本の一つが「鰹節」だ。日本橋近くには老舗の鰹節店もあるが、庶民には築地の鰹節、それも削りたてが似合うのではないだろうか?

「熱もりの蕎麦」
大阪府堺市にある有名な蕎麦店が「ちく満」だ。「ちくま」と読む。ご存知堺市は戦国の世から商人の町として栄えてきた町だ。鉄砲伝来より早くその製法を取り入れて、日本中の鉄砲供給基地となり、また貿易でも財を成した町でもある。その町の周囲は堀を巡らし、あたかも自治権があるような形態であったと言う。そんな伝統ある町にあるこの蕎麦屋。通りを挟んで反対側には「美々卯」の創業店がある立地だ。この「ちく満」の蕎麦が関東生まれの私からするとちょっと変わっている。「関東は蕎麦、関西はうどん」と言われているが、堺のこの蕎麦は太さがまず太い。うどん並みの太さだ。それを所謂「熱もり」と呼ばれる「蒸籠(せいろ)」に蕎麦が乗り、高温の蒸気で蒸し揚げた状態」で出す。タレがまた凄い。それこそ「熱々」のタレに「生卵」を割り入れる。生卵を入れないと熱くてとてもではないが食べられそうにない。それほどに熱いタレなのだ。生卵でちょっと温度が下がったタレに熱々に蒸された蕎麦を入れて食べる。だから関東風の蕎麦の味をまずは賞味しようとして蕎麦だけ最初は食べるなどと乙なことをおっしゃる方には向いていない。熱々の蕎麦にこれも熱々のタレに浸して食べるこの独特の蕎麦、一度味合うと感動すること間違いなしである。但し、蕎麦を食べたのかうどんを食べたのか、最初はよく分からなかったと言っておこう。
以上、東京から勢古口がお送りしました。

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