「七月大歌舞伎観劇記」

「七月大歌舞伎観覧記」第二部の二幕。(写真:歌舞伎1)
「新古演劇十種の内 身替座禅」
「新古演劇十種」とは、音羽屋初代「尾上菊五郎」が成田屋市川家の「歌舞伎十八番」に対抗して作ったものだが、九種で菊五郎は亡くなった。「身替座禅(みがわりざぜん)」の荒筋は、大名「山蔭右京(松本白おう」が惚れた女が都に来たので、会いに行きたいが、妻が行かせてくれない。そこで座禅を一晩組むから誰も近づくなと命令し、部下の「太郎冠者」を身替りに立て、自分は女の元へ行く。しかし、その夜、妻の「玉ノ井」(中村芝かん)が茶を持って夫を労いに来る。だが、実は身替りがばれてしまい、逆に妻が身替り役を代わる。さて朝に帰宅した大名と妻とのやり取りは?ここが一番の見所で二人の掛け合いが面白い。怖い妻に怯える夫だ。
まあどこにでもある浮気のお話しでした。この大名というのは江戸幕府で言えば旗本程度のものらしい。(写真:歌舞伎2)

「御存(ごぞんじ)鈴ヶ森」
ご存知という位だから、このお話しは江戸の人たちには非常に馴染のあるお話しだったようだ。
鈴ヶ森とは品川宿の海側にあった刑場で、江戸時代10万人とも20万人とも言われている悪人たちが死刑になった場所だ。時刻は午後8時頃、屯するのは駕籠かき、所謂雲助たちだ。そこへ飛脚がやって来るが、雲助に掴まってしまう。彼の持っていた書状には「白井権八なる武士を捕まえれば報奨が出る」と書いてあった。そしてそこに駕籠に乗った白井権八(尾上菊之助)がやって来る。雲助たちに囲まれるが、強いこと強いこと、あっという間に蹴散らせてしまう。これを偶然見ていたのが「幡隋院長兵衛(中村錦之助)」で、白井の腕を認めて自分の処の食客にするというもの。長兵衛は浅草に縄張りを持つ大親分で、両者の出会いの物語だ。長兵衛はのちに張り合っていた旗本奴に殺されてしまうのだが。実は白井権八と言うのは「平井権八」という実在の人がいた。これが130人もの辻斬りを行った無法者で最後は鈴ヶ森の露と消えたという。(写真:歌舞伎3)

オリンピックの開幕が近いが、こういった日本の伝統芸能こそ海外の人たちに見てもらいたいものだ。(写真:歌舞伎4)
オリンピックを祝うムードは全くない。今回IOCの体質、本質が分かったことで少なくとも日本ではオリンピック離れは進むのではないか?まあ、仮にオリンピックが終わっても現政権への支持率はむしろ減るだろう。
それにしてもこの組織委員会というもののお粗末さには呆れるね。
以上、猛暑に襲われているといる東京より勢古口がお送りしました。