「成田のウナギ、川豊」

「手前勝手世界食物語、第410」
「ウナギの川豊」
ちょっと日経新聞の6月7日付けの記事から抜粋してみる。「成田では江戸後期からウナギを提供し始めたとされる。当時は利根川などの周辺に生息し、人々にとって身近な食材だった。【成田屋】の屋号で知られる歌舞伎役者の初代・市川団十郎らが熱心に成田山参拝を始め、成田山詣でが流行。江戸から徒歩で数日かけて訪れた参拝客に精を付けてもらおうと、提供を始めたといわれている」
そこで記事にもあった「川豊」本店を訪れた。元祖。ウナギ専門店として1910年に創業したという老舗だ。この店、道路に面してウナギの「裂き、串打ち、そして焼き」の場所が設けられており、通行人からもその作業過程がよく見えるということが特徴だろうか。入口のレジで注文し現金決済をすると小さな紙の札をくれる。結構平日の昼時とはいえ、混んでいる。次から次へとお客が入ってくる。(写真:店内1)

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(写真:店内2)
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メニューは「鰻重、白焼き、肝吸い」の3品だけ、営業時間も午後5時終了とか。多い日には1000匹も捌いているというから凄い。私は一番安い鰻重の並みを頼む。@2300円に肝吸いが@100円だった。鰻重の値段はウナギの多さだけなので安くてもウナギの質には変らない。この店の特徴は「ウナギ、タレ、ご飯の一体で味わって欲しい」とのこと。さて席に案内されて待つ事10分。その間にウナギの捌き過程を見てみる。まずウナギが入った桶があり、たくさんのウナギがにょろにょろしている。(写真:ウナギの桶)
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ウナギ職人の世界では「串打ち3年、裂き8年、焼きが一生」と言われているらしい。その捌きの過程を追ってみる。まずは「裂き」だ。これは流石、職人さんが流れるように捌いていく。まずウナギの頭を押さえて、包丁で首の部分を半分ほど叩き切る。人の首を落とす時に首の皮一枚残すというが、そんな感じだ。そして首に太い釘を打つ。当然ウナギはまだ生きている。そこでウナギを関東は背開きで下ろし、骨を除く。だからウナギは中心部に腹の部分がある開きの状態となる。肝とエラを取り去る。これを上下二つに切る。では連続写真で見てもらおう。(写真:裂き1)
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(写真:裂き2)
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(写真:裂き3)
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(写真:裂き4)
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(写真:裂き5)
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(写真:裂き6)
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(写真:裂き7)
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(写真:裂き8)
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(写真:裂き9)
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(写真:裂き10)
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見事な職人技だ。あっという間に終わってしまった。さあ、次が串打ちだ。この写真に載っている人は実は見習いの人で、先ほどの裂きの職人から指導を受けていた。まず上下二つに捌き切られたウナギの身を並べて一緒に4本の竹串を打つ。右手に串を握り、左手の指でウナギの身を押さえ、串を打つのだが、見ていても難しそうだ。(写真:串打ち1)

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(写真:串打ち2)
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見習いの人が受けていた注意には、4本の串が均等に並ぶこと。これが意外に難しい。また竹串を刺したり抜いたりしないこと。身が壊れる。それから竹串の先が4本とも同じだけの長さになるようにウナギから出ていること。まあ3年経たないと難しいな。失敗作は捨てられていました。(写真:串打ち後)
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そして串を打たれたウナギはまずは「白焼き」される。この店では一度白焼きにしてから、タレに浸して焼くという。東京では白焼きの前に蒸すが、その過程はないようだ。だから濃厚な油のあるウナギになるのだろう。(写真:白焼き)

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そして創業以来継ぎ足ししてきた薄甘口のタレを塗って最後の焼きとなる。(写真:焼き1)
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(写真:焼き2)
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いよいよ鰻重がやってきました。(写真:鰻重)
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ウナギは好きだが、ダイエットを考えるとそう食べられない。今回もご飯は半分ほど残したが、柔らかいウナギは堪能出来た。「上鰻重」が最も人気があるということだが、これはウナギが丸々1匹分入っている。私の食べた並は0.5匹分だった。それでも充分でした。何しろ成田山の参道やその近くにはウナギ屋が60軒ほどあるらしい。「うなぎぱん」というウナギから作ったお菓子もあるという。川豊の隣の菊屋も有名な店らしい。次は菊屋を訪れてみよう。関東と関西ではウナギは扱いが違う。関東が背開きに対して関西は腹開き、関東は蒸してから白焼き、タレ焼きだが、関西は蒸しがない。また関西は首付きだが、関東は首なしだ。こうもウナギに対する風習が違うのだが、納得の成田のウナギでした。
以上、梅雨本番なのに水不足の東京から勢古口がお送りしました。