「錦秋十月大歌舞伎観劇記」

「錦秋十月大歌舞伎観劇記」(写真:K1)
(写真:K2)
昼の部、第一幕「天竺徳兵衛韓噺(いこくばなし)」 四世鶴屋南北作(写真:K5)
徳兵衛とは船頭でありながら、天竺(今のインド)を訪れて日本に帰国した当時では外遊をしたという珍しい人物で実在の人だという。
江戸時代の文化元年(1804年)初演のお話しで、室町幕府の重臣で佐々木桂之助(坂東巳之助)が何者かにより将軍より預かっていた宝剣「浪切丸」を紛失してしまう。この詮議を巡る駆け引きがお話しの主題で、最後は徳兵衛(尾上松緑)が天竺より授かってきた妖術を使いガマとなり悪を懲らしめるというもの。(写真:K4)

第二幕目「文七元結物語」(写真:K3)

二つ話題がある。一つは新しく演出脚本が「山田洋次」であること。二つ目は女優「寺島しのぶ」が女人禁制の歌舞伎座の舞台に出ることである。山田洋次の指名が寺島しのぶであり、大恩がある大御所の要請を松竹としては断られなかったという。実は女優の歌舞伎出演は過去にもあり新派の「杉村春子」や「山田五十鈴」等があるし、近年では團十郎の娘の「市川ぼたん」も出ている。
お話しは幕末から明治にかけて活躍した落語家の「三遊亭園朝」の落語が原作の人気の人情噺だ。
左官の長兵衛(中村獅童)は仕事の腕は良いものの博打と酒に明け暮れ貧乏の極致。長兵衛の連れ子で娘のお久(中村玉太郎)は継母お兼(寺島しのぶ)の苦労を見かねて、吉原遊郭を訪れ自らの身売りをしてお金を得ようとする。見かねた遊郭「角海老」の女将お駒(片岡幸太郎)は1年の期限を付けて長兵衛に50両を貸し付け娘を預かる。しかし長兵衛は帰り道で自殺をしようとしていた大店の手代文七(坂東新吾)に50両をやってしまう。掛け取りの帰りにスリにあい回収した50両を失った文七を助けるためだった。元の木阿弥と化した長兵衛とお兼の前に現れたのは文七とその店の主人だった。果たしてその結末は?江戸人情噺でも有名な作品だけに山田洋次氏の腕の見せ所だ!

以上、秋本番となった東京より㔟古口がお送りしました。