「手前勝手世界食物語 270話」

北海道といえば、時期外れだが「毛蟹」でしょう。二日目の夕食に出て参りました。これが苦手なんだよね。身を穿り出すのが苦手だ。正に無口になってしまって、必死で身を取り出す。毛蟹と言えばすぐに思い出すのが、多分幼稚園か小学生低学年の時の旅の途中、函館でのことだ。いつも夏か冬かの休みには母と妹と一緒に札幌に来ていた。母方の祖父と叔父たちが住んでいたからだった。だから幼い頃の北海道の思い出は多い。その一つが「毛蟹」だった。青函連絡船を下船し、鉄道に乗った時、母が函館駅で毛蟹を買ってきてくれた。それを車内で食べた時の感動は今でもすぐに思い出す。本当に美味しかった。熱々の毛蟹をむしって食べた。あの時の感動は忘れられない。今回も最初は「毛蟹半身」ということだったが、実際に出てきたのは「毛蟹一匹」でしたが、ちょっと小さめだし時期外れだから仕方がないかね。昔新橋の「蟹専門店」に行っていた頃は一匹1万円の毛蟹をよく食べたものだった。懐かしいね。母との思い出の一つには、今でもあの情景が目蓋に浮かぶ。汽車の窓から見ると周囲は蒸気がそこここにあり、今にも動き出そうとする蒸気機関車が見える。そんな時に毛蟹を食べていたという不思議を思い出す。生まれて初めて毛蟹を食べた瞬間だった。美味しかったなあ。
以上、勢古口が北海道からお送りしました。

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