「九月大歌舞伎観劇」

「J  REPORT 2021 9月第4週号」 
「リタイアメント・ノート 12年3ヶ月目」
「VOL.1230 SINCE AUG.12th、1983」
「九月大歌舞伎・第二部・近江源氏先陣館・盛綱陣屋」(歌舞伎座にて)(写真:歌舞伎1)
本篇は1769年1月に初演が大坂の文楽座で行われたもので、全9段ある内、「盛綱陣屋」は第8段に当たる。
本題は「大坂冬の陣」を描いているのだが、江戸時代徳川幕府を直接描くことは許されておらず、時代と舞台を鎌倉時代の京都に変えている。頼朝亡き後、近江源氏の佐々木盛綱(松本幸四郎)は鎌倉方に、弟の高綱は京方に味方している。これは兄の真田信之が徳川方に、一方弟の幸村が豊臣方に味方したことを表している。(写真:歌舞伎2)
戦いでは初陣だった高綱の一子小四郎が捉えられてしまう。この子供を巡っての返す返せぬの争いがあるが、高綱が討ち死にしたことになり、その首実検を命じられた盛綱(松本幸四郎)は偽首だと分かるが、北条時政(家康を模す)には本物だと嘘をいう。すると小四郎が子供ながら切腹してしまう。ここで祖母、母、叔母、叔父たちの涙を誘うというもの。忠義に生きる武士たちの人生を描く。松本幸四郎の演技が光る。
小四郎役の尾上丑之助の子役の演技が素晴らしい。
この数か月毎月桟敷席で観劇しているが、やはり観客の数は少ないと実感する。
それにしても江戸時代でも政権批判は歌舞伎のような場を借りても時代背景を変えて続いていたことに驚くしかない。忠臣蔵などもその一つだろう。