「藤田嗣治展」

J  REPORT2018年 8月第5週&9月第1週」
「リタイアメント・ノート 10年3ヶ月目」
「VOL.1070号 SINCE AUG.12th、1983」
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「藤田嗣冶展」
没後50年ということで開かれていた展覧会は上野の東京都美術館でした。(写真:F1)F1
彼は陸軍軍医の息子として生まれたが、幼い頃から絵が好きで、父親は医者にしたかったらしいが、東京美術学校に入り、絵の道に進む。人生の半分をフランスで過ごした彼は、パリで認められ、戦時中は帰国して、日本軍に協力して戦争絵画を描いたことで戦後は苦労したが、結局フランスに戻り、フランス国籍を取得し、洗礼を受けカソリックとなる。
パンフレットを飾る絵は「カフェ」、1949年の作品だ。(写真:F2)F2
(写真:F3)F3
彼の絵の特徴には、「裸婦の白い肌(乳白色の肌)と猫」がある。猫について彼は、「猫を友達としている。猫はおしとやかで猛々しい」と述べていて、彼の絵にサインのように猫を描いている。裸婦の白い肌は、日本人的な白と黒の対比で西洋にはない新しい独自の感覚だったという。西洋が色使いの妙ならば、日本は白と黒の深みだという。
1929年にニューヨークを訪れた時に囲まれた新聞記者から「女性と猫を描くのは?」と問われ、彼は「女性と猫は全く同じ。猫は大人しくて可愛いが、可愛がらないと引っかく。女性に髭と尻尾を付けると猫と一緒だ。」と述べ、全米の新聞に報道された。

「自画像」、1929年(写真:F4)F4
この絵には彼の集大成の全てが入っている。まず自画像は「おかっぱ頭、丸メガネ、金のピアス、ちょび髭、女性の絵、そして猫」。更に言えば「硯と筆」、日本文化までを示している。

「エミリー・クイン・シャドボーンの肖像」1922年(写真:F5)F5
当時パリで人気となった彼には肖像画の制作依頼が殺到したという。これはその中の一点。油絵、銀箔、金粉・カンバスが特徴的だ。背景の銀箔は色あせて黒くなっているが、描かれた当時は美しかったに違いない。これも東洋的、日本的な彼の特徴なのだろう。

パンフレットより作品2点。(写真:F6)F6
左が彼の出世作で、「私の部屋、目覚まし時計のある静物」(1921年)だ。他の画家の描かない静物を集めて描いたもの。これで彼はパリの画壇に華々しくデビューした。
右は「タビスリーの裸婦」(1923年)。裸婦の肌の白さ、そして猫、更にバックの布地の見事な色彩、素晴らしい作品だ。

パンフレットより1点。「私の夢」1947年(写真:F7)F7
裸婦が寝ている。周囲を囲む動物たちは衣服を纏っている。何とも不可思議な絵だが、藤田の特徴をよく表わしている。

朝日新聞よりの5点。(写真:F8)F8
左上の裸婦像は、「五人の裸婦」1923年。人間の五感を表わしているという。
右の2点は紹介済。
左下は、「二人の少女」1918年。
その横の「闘争(猫)」1940年。何とも奇妙でそれでいて美しい猫たちの乱舞する姿に驚かされる。

「私は世界に日本人として生きたいと願ふ、それはまた、世界人として日本に生きることにもなるだろうと思ふ」
「私の身体は日本で成長し、絵画はフランスで成長した」 以上

「国立西洋美術館・常設展松方コレクションより Ⅵ」
「舟遊び」(写真:B12)B12
クロード・モネ作、1887年。
舟遊びは当時人気のレジャーの一つである。妻カミーユを亡くし、1883年にジヴェルニーに移住したもモネは、近くを流れるエプト川の舟遊びの光景を繰り返し描いている。その中でも本作はひときわ完成度が高い。モデルはのちにモネの再婚相手となるアリス・オシュデの連れ子ブランシュとシュザンヌである。空を映した水のきらめき、水面に揺らめく小舟や人、木々の影、そして周囲の影響を受けて、微妙な色彩を帯びる娘たち自身の肌や服が大胆な筆触で描かれている。

「睡蓮」(写真:B13)B13
クロード・モネ作、1916年。
ジヴェルニーの自邸の庭に造った日本風の蓮池は、モネの連作の格好のモチーフとなる。200点以上を制作市。水面に揺らめく光と影、虚像と実像の戯れを描いた「睡蓮」連作は、モネの画業の集大成となる。アトリエを訪ねた松方幸次郎が画家から直接購入したもので、完成度も高く、晩年の様式をよく示す重要な作品である。時の経過
とともに表情を変える睡蓮の水面を相手に朝から晩まで制作に励んでいた。一見、日本の屏風を思わせる装飾的な平面構成だが、そこには水面、反映像、水底という重層的な絵画空間が生み出されている。

参考資料「MASTERPIERCES The National Museum of Western Art,Tokyo」編集:国立西洋美術館
絵の注釈は全て同上の本から抜粋しています。

暑さがぶり返してきた昨今、最後の夏休みを涼しい美術館で過ごすのもまたいいですよ。